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著者 ハルオ(プロフィール)公開日 2026年10月10日最終更新 2026年10月13日

AIに渡すコンテキスト

第2部 各論(8ページ中2ページ目)

「毎回同じ説明をしているのに、AIの生成物が業務に合わない」

このページでは、AIエージェントに何を渡し、それをどこに書き、セッションをまたいでどう引き継ぐかを、問い合わせ返信や見積書の例で説明します。

結論
  • 渡す情報は、ゴールと読み手、守るルール、資料、見本の4種類です。その仕事に要るものだけを選んでください。
  • 毎回守らせるルールは CLAUDE.md(Claude Code がセッションの開始時に毎回読むルールのファイル)かチャットのプロジェクト設定に、その回だけの条件はプロンプト(AIへの指示)に書きます。
  • セッションの内容は、次のセッションに引き継がれません。続きのある作業は、途中経過をファイルに書かせてください。
  • 書いたルールが機能するかは、新規セッションで別の題材を使って確かめてください。

このページで出てくる言葉の意味は用語一覧で確認できます。

業務でどう使うか

使いどころ
  • 問い合わせ返信の言葉づかいや見積書の書式を CLAUDE.md に書き、毎回の説明を省く
  • 料金表やよくある質問を資料フォルダに置き、要るときだけ AIエージェントに開かせる
  • 翌日に続ける長い作業で、途中経過を引き継ぎ用のファイルに書かせる
避けたい使い方
  • 気づいたことを CLAUDE.md に足し続け、長いファイルにする
  • パスワードや顧客の連絡先を、プロンプトや CLAUDE.md に書く
  • ルールを書いたのと同じセッションで、ルールが機能したと判断する

渡す情報の選び方

渡す情報は4種類に分け、その仕事に要るものだけを選びます。

ゴールと読み手
何を作るか、誰が読むか。たとえば、パソコンの操作に慣れていないお客様への返信なのか、取引先の経理の方への連絡なのか。
守るルール
言葉づかい、書式、やってはいけないこと。たとえば、敬称は「様」にし、返信は3段落までにする。
資料
判断の根拠になるファイル。料金表、在庫表、よくある質問など。
見本
過去の見積書や返信のうち、良いと判断したもの。

関係のない資料まで渡すと、生成物の精度が下がります。コンテキストとは、AIモデルが判断に使う情報全体のことで、プロンプト、CLAUDE.md、資料、それまでのやりとりを含みます。Anthropic の記事は、コンテキストを有限の資源と位置づけ、渡す情報が増えるほど、AIモデルが必要な情報を思い出す精度が落ちるとしています。資料は最初に全部渡さず、置き場所だけを伝えておき、AIエージェントが必要になったときに開かせてください。

見本として過去の返信を渡すときは、お客様の名前や連絡先を {氏名} のような差し込み欄に置き換えた、ひな形の形にしてから渡します。APIキーやパスワードのような認証情報は、プロンプトにも CLAUDE.md にも書かず、.env に置いてください。.env とは、APIキーなどの設定値を、プログラムとは別に書いておくファイルです。

関連:『安全の原則』

注意

AIエージェントが読む文章に、AIへの指示が紛れていることがあります。Webのページ、他人が作ったスキル、社外から受け取った資料が例です。AIエージェントがその指示に従ってしまう攻撃をプロンプトインジェクションと呼びます。社外から取り込むスキルや資料は、使う人が中身を読んでから渡してください。

ルールを書く場所

書く場所は、AIエージェントがその内容をいつ読むかで選びます。毎回守らせるルールをプロンプトに書くと、書き忘れた回だけ条件が抜けます。プロンプトには、その回だけの条件を書いてください。

まず使う場所

最初は、CLAUDE.md とチャットのプロジェクト設定の2つで足ります。Claude Code では CLAUDE.md を使い、ChatGPT や claude.ai をチャットで使う場合は、プロジェクト機能の設定欄が同じ役割を持ちます。

書く場所読まれるタイミング書く内容
CLAUDE.mdセッションの開始時に毎回文体、書式、決まりごと、資料の置き場所
チャットのプロジェクト設定そのプロジェクトで始めたチャットで毎回CLAUDE.md と同じ内容

資料は業務ごとのフォルダにまとめ、その置き場所を CLAUDE.md に書きます。たとえば「見積書」フォルダの中に「資料」フォルダを作り、料金表と過去の見積書を置きます。

Anthropic の公式ドキュメントは、CLAUDE.md を1ファイル200行未満にする目安を示しています。長くなるほど、書いた内容が守られにくくなるためです。

  • まず、1行ずつ「この行を消したらAIは間違えるか」と問い、間違えない行は消します。
  • そのうえで、同じ間違いが2回起きたとき、または同じ訂正をチャットで2回打ったときに、1行足します。
  • 「見積書の有効期限は発行日から30日と書く」のように、守られたかをあとで確かめられる形で書きます。

複数の CLAUDE.md に矛盾する内容があると、AIモデルがどちらかを任意に選ぶことがあります。同じ項目は1か所にだけ書いてください。

CLAUDE.md に書いた内容は、AIモデルが判断に使う助言です。必ず止めたい操作は、フックで実行前に止めてください。フックは AIモデルの外にある処理で、毎回動きます。

実務でのポイント

経営者が決めるのは、CLAUDE.md に書く決まりごとの中身と、資料フォルダに置く資料です。ファイルの作成と配置は、詳しい人に頼んでかまいません。

関連:『AIに与える権限』

慣れてから使う場所

CLAUDE.md の運用に慣れたら、次の2つを足します。

書く場所読まれるタイミング書く内容
auto memoryセッションの開始時に毎回人からの訂正や好み。AIエージェントが書く
スキル開始時は説明文だけ。本文は使うとき決まった業務の手順、確認の項目

auto memory と CLAUDE.md の違いは書き手です。CLAUDE.md は人が書き、auto memory は人からの訂正を Claude Code が自動で書き残します。社内で共有したい決まりは、「覚えて」ではなく「CLAUDE.md に追加して」と頼みます。「覚えて」と頼んだ内容は auto memory に入り、そのPCの中だけに保存されるためです。スキルは、毎回同じ長いプロンプトを打つようになったら作る時期です。

CLAUDE.md、auto memory、スキルとサブエージェントの説明文は、使わない日も毎回読み込まれます。読み込んだ分はトークン(AIが文章を数える単位)として、AIモデルが一度に扱える量を使います。スキルが多すぎると、Claude Code は一部のスキルの説明文を省いて読み込むため、使いたいスキルが選ばれにくくなります。使わなくなったスキルやサブエージェントは、削除するか保管用のフォルダに移してください。

スキルやサブエージェントの名前と説明文は、それだけで役割と範囲が分かるように書きます。AIモデルは説明文を見て、どれを使うかを選ぶためです。

関連:『現時点の仕様』の『AIに渡る情報と、残る記録』

セッションをまたぐ引き継ぎ

セッションの内容は次のセッションに引き継がれないので、続きのある作業は、途中経過を引き継ぎ用のファイルに書かせます。引き継ぎ用のファイルには、次の5点を書かせます。

  • 今の状態
  • やったこと
  • やり残し
  • 判断とその理由。採らなかった案も書く
  • エラー文、ボタン名、設定名。要約せずにそのまま書く

エラー文や設定名を要約すると、次のセッションで同じ原因を探し直すことになるため、そのまま残させてください。

プロンプト例

今日の作業を終える前に、作業フォルダの引き継ぎ用のファイルに、今の状態、やったこと、やり残し、判断とその理由、エラー文や設定名を書いてください。エラー文と設定名は要約せず、そのまま書いてください。顧客名とパスワードは書かないでください。

次のセッションは、引き継ぎ用のファイルを読ませるところから始めます。

プロンプト例

作業フォルダの引き継ぎ用のファイルを読んで、今の状態とやり残しを3行で説明してください。説明がこちらの認識と合っていたら、やり残しの1番目から進めてください。

1つのセッションの中でも、やりとりが長くなると Claude Code はコンパクション(やりとりの自動要約)を行い、チャットで伝えただけの指示が失われることがあります。作業の途中で決めたルールは、引き継ぎ用のファイルではなく CLAUDE.md に足してください。

注意

引き継ぎ用のファイルにも、顧客名、APIキー、パスワードは書かせないでください。作業フォルダのファイルは、次に開いた人やAIエージェントがそのまま読みます。

作業の一部をサブエージェントに任せるときも、同じ考え方をします。サブエージェントは別のコンテキストで動き、呼び出し元のやりとりを見られません。守るルールと必要な情報は、依頼の中に書いてください。同じ問題の直しが続いたときに履歴を消して始め直す方法は、『プロンプト設計の型』で扱います。

関連:『プロンプト設計の型』

ルールが機能するかの確かめ方

書いたルールは、新規セッションで別の題材を使って確かめます。ルールを書いたのと同じセッションで守られても、AIエージェントがそのセッションのやりとりを参照しているだけのことがあるためです。

ルールを書いて保存するCLAUDE.md かスキルに書く
新規セッションを開く
ファイルが読み込まれたかを確かめるClaude Code では /context で、読み込まれたファイルの一覧を見る
ルールを書いたときとは別の題材で試す同じ題材では、ルールが効いたのかを判断しにくい
守られなければ、ルールの行を直す生成物ではなく、ルールの書き方を直す

守られないときは、原因を2つに分けて見ます。ファイルが読み込まれていなければ、置き場所やファイル名を見直します。読み込まれているのに守られなければ、長すぎないか、あいまいな言葉がないかを見直します。

まとめ

  • 今の業務で毎回説明している決まりを、CLAUDE.md かチャットのプロジェクト設定に書いてください。
  • 書いたルールは、新規セッションで別の題材を使って試してください。
  • 翌日に続く作業では、終える前に引き継ぎ用のファイルを書かせてください。

よくある質問

CLAUDE.md は、業務ごとに分けられますか?
はい。CLAUDE.md は作業フォルダごとに置けます。たとえば「書類」フォルダの中に「見積書」と「問い合わせ返信」の2つのフォルダを作り、それぞれに CLAUDE.md を1つずつ置きます。場所は 書類/見積書/CLAUDE.md と 書類/問い合わせ返信/CLAUDE.md です。「見積書」フォルダで始めたセッションでは、「見積書」フォルダの CLAUDE.md が読まれます。複数の CLAUDE.md が読まれる場合は、すべてがつなげて読まれます。
別のPCやスマホで開いたときも、同じルールが効きますか?
CLAUDE.md はファイルなので、同じファイルを置いた作業フォルダで始めたセッションなら、別のPCでも読まれます。auto memory はそのPCの中だけに保存されるため、別のPCでは読まれません。claude.ai のチャットは、同じアカウントならPC、Web、スマホで共有されます。Claude Code のセッションは、Remote Control を使わない限り claude.ai には表示されません。
CLAUDE.md やスキルの作成を社外に頼むとき、何に気をつければよいですか?
書く決まりごとの中身は、経営者が決めて渡してください。渡すのは、決まりごとの一覧と、資料を置くフォルダの場所です。パスワードやAPIキーは渡しません。受け取ったファイルは、AIへの指示が紛れていないかを、中身を読んで確かめてから使います。

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