← AI導入ガイドに戻る

著者 ハルオ(プロフィール)公開日 2026年10月10日最終更新 2026年10月13日

法律とガイドライン

第2部 各論(8ページ中8ページ目)

「AIに書かせた広告文や、AIに渡した顧客名簿が、どの法律に関わるのかが分からない」

このページでは、AIを業務に使うときに関わる法律とガイドラインを、個人情報、著作権、社外の機密情報と規約、広告と通信販売と会計の分野ごとに説明します。一般的な説明で、法律相談ではありません。自社の事案で判断できないときは、出典を開くか、専門家に確認してください。

結論
  • AIを使っても、法律上の責任はAIやAIを提供する会社に移らず、AIを使った会社に残ります。
  • 個人情報は、件数が少なくても、個人事業主でも、個人情報保護法の対象になります。個人情報は、ひな形と差し込みに分けて扱ってください。
  • 著作権の侵害は、AIが作ったかではなく、既存の作品と似ているか、既存の作品をもとにしたかで判断されます。
  • 広告文をAIに書かせても、表示の責任と根拠資料の用意は広告主が負います。

このページで出てくる言葉の意味は用語一覧で確認できます。

業務でどう使うか

使いどころ
  • 社内のAI利用ルールを書くときに、このページの見出しを項目に使う
  • 顧客名簿や取引先の資料をAIに渡す前に、当てはまる見出しを読む
  • 専門家に相談するときに、どの法律のどの点かを示して聞く
避けたい使い方
  • 表の要点だけを見て、自社の事案を「問題ない」と判断する
  • 「AIが作ったから責任はない」と取引先に説明する
  • 規約を読む前に、本物の顧客名簿でAIを試す

法律上の責任の所在

個人情報保護法、著作権法、景品表示法のどれでも、責任を問われるのはAIを使った会社です。

AIを提供する会社の規約にある「出力はあなたのもの」は、その会社の権利を利用者に渡すという意味にとどまるとされています。第三者の権利を侵害しないという保証ではありません。

総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、法的拘束力のない指針です。令和8年3月31日の第1.2版は、AIを使うだけの会社にも「AI利用者」として次の事項を求めています。

  • 想定された範囲内で使う
  • 精度とリスクを理解する
  • 個人情報や機密情報を不適切に入力しない
  • 関係者に説明する

IPA(情報処理推進機構)の中小企業向けガイドライン第4.0版も、規約の事前確認、生成物の人による確認、AIを補助として使うことを挙げています。

個人情報の扱い

顧客が数十件でも、顧客台帳を事業に使っていれば、個人情報保護法の義務を負います。

個人情報保護法の義務を負う個人情報取扱事業者は、個人情報のデータベースを事業に使う事業者です。個人情報保護委員会のガイドラインでは、件数が少なくても、個人事業主でも該当するとされています。

個人情報保護委員会は令和5年6月、生成AIの利用について注意喚起を出しました。本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答以外の目的で扱われると、法令違反の可能性があるとしています。

法律上の要件は、AIを提供する会社を委託先として扱い、学習に使わないこと、保存期間、削除を契約で確かめることと、自社の安全管理措置です。安全管理措置とは、個人データの漏えいなどを防ぐために事業者が取る対策で、従業員100人以下の事業者向けの例示があります。

本ガイドの推奨
  • 個人情報と機密情報はAIに入れず、ひな形と差し込みに分けます。AIには {氏名} のような差し込み欄を入れたひな形だけを作らせ、実際の名前の差し込みはAIの外で行います。
  • AIを提供する会社の法人向けの契約プランを結び、契約内容を確認した会社は、AI利用ルールで、AIに入れてよい情報の種類を決めたうえで使います。

Anthropic の法人向けの規約は、既定で入力を学習に使わず、2026年1月1日からデータ処理契約を含みます。それでも個人情報を入れるかどうかは、契約内容を確認したうえで経営者が決めてください。

令和8年の改正法は2026年7月17日に公布され、2026年9月時点では未施行です。細目はこれから決まる予定で、AIに入力するときの注意点は変わりません。

著作権の判断基準

AIの生成物による著作権の侵害は、AIを使わない場合と同じ2つの基準で判断されます。

文化庁が令和6年3月に示した「AIと著作権に関する考え方について」によるものです。作風や画風が似ているだけなら、侵害にはなりません。

類似性
既存の作品の表現の本質的な特徴を、生成物から直接感じ取れるかどうかです。既存のキャラクターと顔や服装が同じに見える画像は、問題になります。
依拠性
既存の作品をもとにして作ったかどうかです。他社のチラシの画像をAIに入力して作ったチラシは、問題になります。

AIの生成物は、プロンプトを長くしたり、何度も生成して選んだりするだけでは、原則として著作物性が認められないとされています。人が創作的に加筆や修正をした部分は、通常は著作物になります。

確かめること小規模事業者での例
他人の作品を入力しない「あの有名なポスター風に」とプロンプトに書かない
公開前に似たものが無いかを見るSNS投稿の画像を、画像検索で確かめてから公開する。他社の文を使うときは引用の条件を守る
生成の過程を記録する会社案内の画像のプロンプトと日付を、画像と同じフォルダに保存する
取引先に説明する請け負ったチラシの納品時に、文案はAIで下書きし、人が修正したと伝える

公開先の規約が申告を求めることもあります。電子書籍の出版サービスの一部は、AIが作った文章や画像をAI生成コンテンツとして申告するよう求めています。

社外の機密情報と利用規約

取引先から預かった資料をAIに入力する前に、契約と規約を確かめます。

不正競争防止法は、秘密として管理され、事業に役立ち、公に知られていない情報を営業秘密として守っています。経済産業省の営業秘密管理指針は、外部のクラウドに置くだけでは秘密として管理していることは否定されないとしつつ、生成AIを提供する会社などの第三者に渡すと、否定される場合もあり得るとしています。

秘密保持契約に、外部サービスへの入力や再委託を制限する条項がある場合もあります。元請けから預かった仕様書をAIで要約する前に、契約書の第三者への開示の条項を読んでください。

AIを提供する会社の規約では、次の4点を確かめます。個人向けと法人向けで規約が別の場合が多いため、契約している契約プランの規約を読んでください。

  • 入力と出力の権利
  • 学習への利用と、その止め方
  • 出力の正確性についての免責
  • 禁止されている使い方

Anthropic の Usage Policy は、偽のレビューの作成や、他人の知的財産権の侵害などを禁じています。規約は一般に出力の正確性を保証していないため、ハルシネーションを前提に、人が事実を確かめます。

2026年9月時点の仕様

Anthropic の個人向けの契約プランでは、claude.ai の設定「モデル改善に協力」がオンのとき、チャットと Claude Code(Anthropic 社が提供するAIエージェント)のセッションが学習に使われます。法人向けの Team、Enterprise と Claude API は、利用者が別途同意しない限り学習に使われません。ChatGPT も、個人向けでは入力を改善に使うことがあり、設定で止められます。法人向けは既定で使いません。

関連:『現時点の仕様』の『Claude Code 全般』、『ChatGPT、Codex』

広告、通信販売、会計の決まり

AIで作った広告や販売ページでも、表示の責任は自社にあります。

景品表示法
効果や性能をうたう表示には、根拠資料が要ります。不実証広告規制により、資料を出せなければ、実際より良いと誤解させる表示とみなされます。AIが下書きした「作業時間が半分に」も、実測の記録が無ければ使えません。
ステルスマーケティング
広告と明かさない投稿は、令和5年10月1日から景品表示法違反です。対象は広告主です。紹介の投稿を頼むなら、広告表示を入れることを依頼の文面に書きます。
特定商取引法
ネットでの申込みは通信販売に当たります。広告の表示事項は第11条、注文確定の直前の最終確認画面は第12条の6に定められています。AIで作った申込ページは、事業者名、価格、返品条件の表示と最終確認画面を確かめてから公開します。
特定継続的役務
長期で高額の継続的なサービスは、別に規制されています。パソコン教室は、期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるものが対象で、オンラインも含みます。
電子帳簿保存法
メールやクラウドで受け取った請求書などの電子取引データは、保存が必要です。AIに請求書のPDFを転記させたあとも、元のPDFを要件どおり保存します。

税理士法で禁止されているのは、他人の税務相談と、他人の申告書の作成です。自社の申告書を自社で作ることは禁止されていないため、その準備にAIを使えます。

関連:『公開前の確認』

まとめ

  • AIを使っても、法律上の責任はAIを使った会社に残ります。
  • 個人情報と機密情報はAIに入れず、ひな形と差し込みに分けてください。法人向けの契約プランで扱うかどうかは、契約内容を確認したうえで経営者が決めます。
  • 取引先の資料は、機密保持契約と規約を確かめてから入力してください。
  • 広告文や公開する画像は、根拠資料と既存の作品との類似を人が確かめてから出してください。

よくある質問

法律の判断に迷ったら、誰に確認すればよいですか?
まず分野ごとの出典を開いてください。個人情報は個人情報保護委員会、広告表示と通信販売は消費者庁、著作権は文化庁の資料です。自社の事案に当てはまるか判断できなければ、契約や権利の問題は弁護士、帳簿や申告は税理士に確認します。相談するときは、AIに入力した情報と、生成物を見せる相手を書き出して渡すと、論点が絞れます。
自社の申告書の準備にAIを使ってもよいですか?
使えます。税理士法で禁止されているのは、税理士でない人が、他人の税務相談に応じることと、他人の申告書を作ることです。自社の申告書を自社で作ることは禁止されていません。AIが出した数字や判断は、元の帳簿や資料と照らし合わせてから使ってください。
法律や規約が変わったことに、どう気づけばよいですか?
このページの記述は2026年9月時点です。令和8年の改正個人情報保護法は細目がこれから決まる予定のため、施行前に個人情報保護委員会のページを確かめてください。AIを提供する会社の規約も変わります。規約を確かめた日を記録し、自社のAI利用ルールを見直す時期を、3か月ごとのように決めておいてください。

「うちの場合はどこから始めるか」を一緒に整理します

本ガイドは、個人事業主や中小企業が、AIを業務に使うための考え方をまとめたものです。読んで「自社の業務ではどうなるのか」と思った方は、お問い合わせフォームから、今の業務と困りごとを教えてください。

出典

仕様を確認した日は2026年9月25日です。記載内容は、その時点の公式情報に基づいています。ツールやサービスの仕様は変わるため、迷ったときは現時点の仕様と各提供元の公式ページを確認してください。

← AI導入ガイドに戻る