← AI導入ガイドに戻る

著者 ハルオ(プロフィール)公開日 2026年10月10日最終更新 2026年10月13日

業務の型

第3部 実践(6ページ中1ページ目)

「どの業務をAIエージェントに任せ、どこを人が受け持てばよいのか分からない」

このページでは、AIエージェントに任せる業務を、調べる、まとめる、作る、発信するの4段階に分け、段階ごとに人が確かめることを業務の例で説明します。

結論
  • AIエージェントに任せる業務は、調べる、まとめる、作る、発信するの4段階に分けて考えてください。
  • 文章、画像、動画を生成する作業は、どれも『作る』段階に入ります。
  • 人が確かめるのは、調べる段階では一次情報、まとめる段階では数値、作る段階では権利と表示の根拠、発信する段階では外部に出る操作です。
  • 段階が進むほど取り消しにくくなるため、AIエージェントに与える権限を狭くしてください。

このページで出てくる言葉の意味は用語一覧で確認できます。

業務でどう使うか

使いどころ
  • 競合3社の公式サイトから、価格とURLを表にする仕事を AIエージェントに任せる
  • 在庫表から、先月との差と気になる点を3行にまとめさせる
  • 商品の説明資料から、SNS投稿の文章と画像の案を作らせる
  • 問い合わせ返信の下書きを作り、保存するところまでを任せる
避けたい使い方
  • 自動収集を禁じているサイトの情報を、AIエージェントに集めさせる
  • 顧客名簿を、名前や連絡先を含んだまま AIエージェントに渡す
  • AIエージェントが書いた実績の数字を、根拠の資料なしに載せる
  • 公開、予約投稿、送信を、人の確認なしに定期実行に入れる

業務の4段階

AIエージェントに任せる業務は、調べる、まとめる、作る、発信するの4段階に分けられます。競合の価格調査も、在庫表の集計も、SNS投稿も、問い合わせ返信も、この4段階のどこかに当てはまります。

番号が大きいほど、失敗したときに取り消しにくい段階です。

1調べる検索する、ページを読む、出典のURLを残す
2まとめる集計する、要約する、表や報告文に整える
3作る文章、画像、動画を生成し、下書きとして保存する
4発信する返信、投稿、公開として外部に出す

段階が進むほど、影響を受ける相手が社内から取引先やお客様へ広がり、失敗を取り消しにくくなります。そのため、段階が進むほど AIエージェントに与える権限を狭くしてください。

段階人が確かめること関連する問い
調べる開いてよいサイトの指定、一次情報かどうか権限 検証
まとめる渡す資料の選別、数値と元の資料の照合コンテキスト 検証
作る他人の作品との類似、表示の根拠検証 安全と責任
発信する宛先と公開範囲、外部に出る操作の最終確認権限 安全と責任

関連:『変わらない5つの問い』

調べる段階の確認

調べる段階で人が確かめるのは、集まった情報が一次情報(発信元が直接出した情報)かどうかです。

何を調べるかと、開いてよいサイトは、人が先に決めます。AIエージェントが受け持つのは、ページを開き、要点と出典のURLを表にするところまでです。AIモデルは、取れなかった情報をそれらしい文章で埋めることがあるため、プロンプト(AIへの指示)で載せてよい範囲を決めてください。

プロンプト例

競合3社の公式サイトの価格ページを開き、商品名、価格、URLを表にしてください。開けたURLだけを載せ、取れなかった箇所は「不明」と書いてください。

表ができたら、人がURLを実際に開き、価格と日付が一致するかを確かめます。

注意

AIエージェントが読むWebページには、「この内容を外部に送れ」のような指示が書き込まれていることがあります。この攻撃をプロンプトインジェクションと呼び、OWASP は完全に防ぐ方法は分かっていないと説明しています。調べる段階の AIエージェントには、送信、投稿、支払いのツールを持たせないでください。読むだけなら、紛れ込んだ指示に従っても、情報を外部に送れないためです。

通販サイトや動画サイトの規約には、自動化した収集を禁じているものが多くあります。集める前に、規約を読んでください。

まとめる段階の確認

まとめる段階で人が確かめるのは、生成物の数値や名前が元の資料と一致しているかです。

まとめた生成物は社内にとどまるため、誤りがあっても作り直せます。ただし、AIモデルが事実と違う内容をもっともらしく出力するハルシネーションでは、文章が自然なまま数字や名前が入れ替わります。人は、次の6項目を元の資料と照合してください。

  • 数字
  • 日付
  • 金額
  • 固有名詞
  • 引用
  • URL
例

在庫表の月次の集計です。先月との差、商品別の増減、気になる点を3行にまとめる仕事を AIエージェントに任せます。人は、合計の数量、商品名、集計の期間が元の在庫表と一致するかを照合します。

AIエージェントに渡す資料は人が選びます。機密情報は渡さず、顧客の名前や連絡先は、ひな形と差し込みに分けてください。毎月同じ形で集計させるなら、手順を CLAUDE.md やスキルに書いておくと、同じプロンプトを毎回書くより安定します。

関連:『安全の原則』、『生成物の検証』

作る段階の確認

作る段階で人が確かめるのは、生成物が他人の作品に似ていないかと、表示に根拠があるかです。

作る段階では、AIエージェントが返信文、投稿文、見積書のような文章と、画像や動画を生成します。どの生成物も、下書きとして保存させたところで止めます。

他人の作品との類似
他人の作品名や既存の画像をプロンプトに入れていないかを確かめます。似たものが無いかを調べ、使ったプロンプト、日時、AIエージェントの名前を記録してください。著作権の侵害は、類似性と依拠性で判断されるためです。
表示の根拠
「満足度95%」のような効果や実績の表示に、元のアンケート結果などの根拠資料があるかを確かめます。根拠を出せない表示は、景品表示法の不実証広告規制で不当表示とみなされます。

SNS投稿の場合は、商品の説明資料を渡し、本文の案と画像の案を作らせます。

プロンプト例

添付の商品説明をもとに、SNS投稿の本文案を3つ作ってください。効果や実績の数字は資料に書かれているものだけを使い、資料のどこに書かれているかを添えてください。他社の商品名や作品名は使わないでください。

関連:『公開前の確認』、『法律とガイドライン』

発信する段階の確認

発信する段階では、AIエージェントの作業を下書き保存で止め、送信、公開、予約のボタンは人が押します。送った返信や公開した投稿は、取り消せないためです。

「送信しないで」とプロンプトに書いても、AIモデルが従わないことがあります。発信する段階の AIエージェントには、送信や投稿のツールを持たせないでください。必ず止めたい操作は、フックで実行前に止めます。どの操作を止めるかは経営者が決め、設定は詳しい人に頼んでかまいません。

プロンプト例

過去の返信例と料金表をもとに、次の問い合わせへの返信を作り、下書きとして保存してください。送信は行わず、保存したら報告して止まってください。

人は、料金と日付を料金表と照合し、宛先を確かめてから送信ボタンを押します。

注意

予約投稿は、時刻が来ると人の確認なしで公開されます。予約まで AIエージェントに任せると、公開まで自動にしたのと同じです。決まった時刻に動くルーティンも、実行中は人への確認が出ません。ルーティンに入れるのは、下書きまでにしてください。

関連:『AIに与える権限』、『定期実行と監視』

まとめ

  • 任せたい業務を1つ選び、調べる、まとめる、作る、発信するのどの段階に当たるかを書き出してください。
  • 文章、画像、動画の生成は『作る』段階として扱い、他人の作品との類似と表示の根拠を人が確かめます。
  • 段階が進むほど、AIエージェントに与える権限を狭くしてください。
  • 送信、公開、予約のボタンは人が押し、必ず止めたい操作はフックで実行前に止めてください。

よくある質問

任せたい業務が、4段階のどれに当たるか分かりません。
その業務の最後に何が残るかで決めてください。調べた結果の表なら『調べる』、集計や要約なら『まとめる』、文章、画像、動画の下書きなら『作る』、相手に届く返信や投稿なら『発信する』です。1つの業務が複数の段階にまたがるときは、いちばん後ろの段階に合わせて権限を狭くします。
顧客名簿を使う返信の下書きも、AIエージェントに任せてよいですか?
名前や連絡先は渡さず、ひな形と差し込みに分けてください。AIエージェントには名前を空欄にした返信のひな形を作らせ、名前や金額は人が表計算ソフトなどで差し込みます。AIを提供する会社の法人向けの契約プランを使う場合も、契約内容を確認したうえで、渡してよい情報を経営者が決めます。
作る段階で、法律に触れないか判断できません。
公開や送信の前に、判断できる人に確認してください。他人の作品に似た生成物や、根拠の資料がない効果や実績の表示は、公開を止めます。取引条件の表示や、依頼を受けた投稿かどうかの表示も、発信する前に確かめます。確認する観点は『法律とガイドライン』と『公開前の確認』にまとめています。

「うちの場合はどこから始めるか」を一緒に整理します

本ガイドは、個人事業主や中小企業が、AIを業務に使うための考え方をまとめたものです。読んで「自社の業務ではどうなるのか」と思った方は、お問い合わせフォームから、今の業務と困りごとを教えてください。

← AI導入ガイドに戻る